第14回APJE総会兼研修会 報告

第14回APJE総会兼研修会
日時:2023年2月4日(土)午前11時から午後18時半
会場:HOTEL Exe Plaza Madrid およびオンライン(Zoom)
講師:中西久実子先生(京都外国語大学外国語学部日本語学科教授)
テーマ:「欧州の日本語学習者にみられる「は」「が」の問題とその解決方法」
主催:スペイン日本語教師会、国際交流基金マドリード日本文化センター
総会参加者数:49名(会場:32名、オンライン:17名) 研修会参加者数:67名(会場:38名、オンライン:29名)

2023年2月4日(土)午前11時から午後18時半にて、スペイン日本語教師会・国際交流基金マドリード日本文化センター主催による第14回APJE総会兼研修会が行われました。
今回はマドリッドのHOTEL Exe Plaza Madridにて対面会場、およびオンライン(Zoom)参加というハイブリット形式で開催されました。
2020年2月1日に開催された第11回の総会兼研修会を最後に2021年、2022年は新型コロナウイルス感染症の影響によりオンライン形式のみで開催され、対面会場にて開催されるのは3年ぶりとなりました。

午前に行われた総会の部では、中前隆博大使のビデオメッセージ、国際交流基金の森藤所長のご挨拶から始まり、例年同様教師会の運営に関する報告が行われました。また午後の研修会の部では京都外国語大学より中西久実子先生をお迎えし「欧州の日本語学習者にみられる「は」「が」の問題とその解決方法」というテーマにてワークショップが行われました。

研修会第一部では、中西先生の基調講演が行われ、先生の経歴や日本語教育に携わるきっかけなどを中心に興味深い話をお聞きしました。
特に印象的だったのは日本語教育から世界平和に繋がるエピソードでした。先生は「日本語教育を通じ世界中にたくさんの友人や知り合いを作りたい。もし戦争が起こった時、自分の友人や知り合いのいる国を攻撃したくはないでしょ?」と仰り、
日本語教育というのは単純に言語を教えるというだけでなく、人間同士の交流、ひいては世界平和にも貢献できるのかと感心しました。

そして二部ではグループディスカッションを中心にワークショップが行われました。
グループワークでは「は」と「が」の違いを改めて認識するための選択式問題の解答をみんなで考えたり、なぜ「は」であるべきか?「が」であるべきか?を区別するための文法的なルールを学びました。
そのルール説明の中で先生が強調されていたのは「従属節の場合」です。「は」と「が」を区別するうえで従属節の場合のルールはとても重要であり、これだけ覚えればいいと何度もおっしゃっていました。
今回のテーマは日本語を外国人に教えるすべての先生にとって学習者から一度は聞かれるであろう「は」と「が」の違い、そして説明するのが難しく頭を悩ませるものです。
日本語話者にとって「は」と「が」の使い分けは無意識に行われ、似ているようで使い分けを間違えると伝わるニュアンスが変わる厄介なものです。
初級の学習者は短いフレーズを使い文法を学びます。しかし「は」と「が」を使い分けるには、前後のフレーズやシチュエーションを含め、どういう意図を伝えたいのかという正しい理解ができなければなりません。初級学習にとっては難問ですが、教える先生にとっても「は」と「が」の違いを教えるのは難問です。
今回のワークショップで中西先生は、中級レベル以降の文法教育においては、短いフレーズではなく長いフレーズで教えなければいけないと強調されていました。
4時間にわたる研修会でしたが、とても関心の高いテーマであっというまに時間が経ちました。私を含むオンライン参加の先生たちは研修会が終わった後もそのまま残り意見や感想を言い合ったり話に花をさかせ名残惜しみながらフェードアウトしました。

池田訓子(サラゴサ)


2月4日、マドリードにおいて第14回APJE総会、研修会(ハイブリッド形式)が開催されました。
コロナ禍をきっかけとした、様々なイベントのオンライン化によって、講演会や研修会等に参加できる機会が増えました。都市部で行われる研修会の興味深いタイトルを、羨望を込めて眺めていた地方在住の会員にとってはとてもありがたいことです。
しかし、今回は年に一度の総会、しかも3年ぶりの対面式という機会でしたので、現地で参加しました。前日、当日と2泊になりましたが、普段お世話になっている方々と直にお話しでき、大変実りの多い滞在となりました。

午前中の総会では、スペインでの日本語教育について、拡大傾向にあるという報告がありました。日本語教師としてのモチベーションが高まる喜ばしいニュースです。その気持ちの後押しをするように、2023年度に企画されている日本語事業や研修会、教科書「いろどり」の紹介がありました。日本文化理解、日本語学習をより楽しく彩る様ざまな企画が盛り沢山で、会員の諸先生もわくわくした気持ちになられたのではないでしょうか。

午後からは京都外国語大学の中西久実子先生による講演「欧州の日本語学習者にみられる『は』『が』の問題とその解決法」、そしてワークショップ「中級レベル以降の日本語授業ですぐに使える効果的な『は』『が』の教材と指導法」でした。
ある意味見慣れた、しかしその複雑さ故に敬遠しがちなテーマです。しかし中西先生は「すぐに使えて効果的」、「シンプルなルール」、「尊敬される先生になれる」等の魅力的なワードを織り交ぜながらお話を進められたので、こちらもその言葉につられて前のめりになって伺ううちにあっという間に時間が過ぎました。設問が多く、「コレはなぜ……、アレはどうして……」と考えながらゴールに辿り着く、まさに「学習者自身による考察、気づき」という今回のポイントを実体験できるワークショップでした。

先生曰く、「一回の授業で、『気づき』が一つあれば十分」とのことでしたが、今回の研修会では、学習者自身が考えるプロセスや中級以降での長文構造の練習の重要性、生身の教師としての授業の作り方など、多くのことを学べたように感じます。

総会と研修会、そして懇親会を通して、学びとともに、今後の活動へのやる気が高まる良い機会をいただけたと思います。ご多忙の中、企画、準備に携わられた皆様に御礼申し上げます。ありがとうございました。

バスク州ギプスコア
宮地 涼子