第39回APJE定例研修会 報告
日時:2025年4月27日(日)10時30分~14時00分
会場:オンライン(Zoom)
講師:ニコルス潤子先生 (オーストラリア・メルボルン大学、ビクトリア州小中学校日本語教員)
テーマ:「大人とどう違う? ティーン学習者に響く日本語指導」”How different are they?: Tips for teaching Japanese to tweens & teens”
参加者数:39名

先日、APJE主催のオンライン研修会に参加し、「大人とどう違う?ティーン学習者に響く日本語指導」というテーマで、ニコルス潤子先生のお話を伺いました。
ニコルス先生はオーストラリアで、幼児から成人まで幅広い年齢層に日本語を教えてこられたご経験をお持ちです。今回は、現地の日本語教育事情や、実際の授業での学習者の反応など、具体的な事例を交えながらお話しくださいました。
私は普段、成人を対象とした日本語教育が中心で、ティーン、特にローティーンへの指導経験はほとんどありません。そのため、今回の研修は未知の世界に触れる機会として、とても楽しみにしていました。
研修では、ティーン学習者の特徴として、「嫌いなことはやらない」「目の前のことに集中する」「繰り返しが大事」「音声の習得が得意」といった点が挙げられました。また、文法は説明よりも具体的なパターンをたくさん見せ、使う中で覚えるのが効果的だそうです。体を動かしたり、遊びを取り入れたりする学習も有効で、小さな成功体験を重ねることで良い学習サイクルが生まれるそうです。
一方で、大人の学習者は「目標を持って計画的に学べる」、「文法は説明してもらう方が安心する」、「間違いを恐れる」といった傾向があり、音声の習得には限界があるとのことでした。ティーンと大人の学習者の間に違いがあっても、子どもに有効な方法は大人にも効果的なことが多くあり、例えば「ブレインブレイク」など体を動かす活動や、「間違っても大丈夫」と感じられる関係づくりは、年齢を問わず学びを支える工夫になると感じました。

また、「やる気」を高める要素として、スイスのスプリンター先生による「自己決定理論」が紹介されました。ニコルス先生は、「自律性(自己決定のチョイスがある)」、「有能感(できたという達成感)」、「関係性(教師、クラスメートとの関係づくり)」という3つの欲求を満たすことを意識して授業設計されているそうです。紹介された授業例には、「食べ物」、「スポーツ」、「アート」など、身近で興味を引くトピックが取り上げられており、「学習した文型を繰り返し使う」、「自分のことを話す」、「興味があるテーマを調べて発表する」といった活動が共通していました。さらに、実際にあるWebキャンペーンへの参加や、社会問題について考えるといった取り組みも紹介され、日本語を学ぶことを通して得られる体験の広がり、そして学習者の成長に寄与する教育の可能性を感じさせられました。
今回の研修はティーンを対象とした指導の工夫でしたが、研修を通して、年齢に関わらず、モチベーションを維持するためには、学習者のニーズや関心を教師がどれだけ理解しているかが鍵となり、アンケートや授業中の活動を通して、学習者を知る姿勢の大切さを実感しました。
最後のグループワークでは、「夢見るセッション」として、今後試してみたいことを自由に話し合いました。「体験型の授業が効果的だと思う」、「クラス外とつながる活動に挑戦したい」といった前向きな声が多く聞かれましたが、「アカデミーなどでは実施が難しい」といった現実的な課題も共有され、参加者同士の意見交換を通じて、学びと気づきの多い時間となりました。
講師のニコルス先生、そして研修を企画・運営してくださった皆様に、心より感謝申し上げます。
宮島知
