第41回APJE定例研修会 報告

第41回APJE定例研修会 報告
日時:2026年5月17日(日)10時30分~14時00分
会場:ハイブリッド(対面+オンライン)
対面:Escuela Oficial de Idiomas Jesús Maestro (C.Jesús Maestro, 5, Chamberí, 28003 Madrid)
オンライン:Zoom
講師:APJE漢字研究会
テーマ:みんなで考える自律学習のための漢字練習問題 ー「Aprendamos 101 kanjis: los primeros kanjis para hispanohablantes A1」を使ってー
参加者数:会場19名、オンライン20名
※APJEは本研修会の実施に国際交流基金のさくらネットワーク助成を受けています。
会場の様子

一般的に漢字の学習は教室の限られた時間の中で扱うには限界があって、生徒の自主性に委ねられている部分が多いのではないでしょうか。しかし、文法や語彙の学習内容と漢字のテキストの例文、または語彙が合っていなかったり、そもそもスペイン語母語話者向けの漢字のテキストがあまりなかったり、生徒の漢字学習は効率的に行うものというよりは時間と労力をかけるものという認識が先生の側にも生徒の側にもあるような気がします。アリシア・コルテスさんの漢字についての調査結果は、日本語教師なら、日頃生徒たちから聞こえていた漢字についての『文句』とほぼ同じと思ったことでしょう。漢字が大切なことはわかっているんだけれど、さて、どう学習させたらいいのか、どう学習したらいいのか。

そんな漢字学習の問題点を解消すべく、APJEの漢字研究会のメンバーが作成したのが自律学習テキスト『Aprendemos 101 Kanjis: los primeros kanjis para hispanohablantes A1』」というスペイン語母語話者向けのA1の漢字の教材です。このテキストは視覚的に見やすく構成され、自律的な漢字学習を促そうと、例文や問題がMCERのA1の学習内容に則ったテーマで展開されています。つまり、ここに載っている例文はA1の学習者が理解でき、即使えるタイプの例文、練習問題も即会話や読解で使える語彙、文なのです。スペインの日本語教師、スペイン語母語話者の日本語学習者が喉から手が出るほど欲しい漢字教材がここにあるのです。

今回の研修会はこのテキストを使って、『みんなで考える自律学習のための漢字練習問題』というテーマで行われました。まず、この新しい漢字テキストの説明を聞いた後、グループに分かれて学習者に自主的に漢字の誤用に気づかせることができる練習問題について考察しました。私の経験では、普段から生徒の漢字の間違いを直して、生徒本人に直接指摘することもあるというのに、実際なかなか直らないというケースもあります。いかに自分で間違いに気づくかというのは、結局のところ、漢字を書く時に意識すべきことに気づくということに繋がっているということですね。学習者に自分で自分の間違いに気づかせられるような練習問題というのは、シンプルですが、大事な視点だと思いました。

グループワークの様子


二つ目のグループ活動はAレベルの学習者向けに漢字を使った仲介問題を作るという内容でした。実際の所、漢字は読んで、書いて、意味を理解して、使って、初めて身につけるもの、だからAレベルの学習者でも使える練習問題を作成しようというのはとても理に適ったことだと思います。そして、その問題が現実的な設定であればあるほど、学習者も興味を持つでしょう。私たちがグループ活動で出し合ったアイデアが漢字研究会の活動を通して形を結んで、次なる漢字のA2教材へと繋がっていくことを願っています。
今回の研修会はとても実際的で、日本語教師なら誰でも興味がある内容だったのではないかと思います。私たち日本語母語話者は自分たちが漢字を学習してきたプロセスを身を以って知っています。それは、日本語学習者もほぼ同じかと思います。ただ、日本語母語話者でない学習者に向けて限界のある語彙、文法内容の中でいかに楽しく効率的に漢字を自律学習させるかという視点を持つ教材を作られた漢字研究会のメンバーの仕事に頭が下がる思いです。また、日本語母語話者ではない先生方も多数参加しておられて、生徒の漢字学習への関心の高さがうかがえました。みんなでこの壮大な漢字の学習について考えようというテーマには気づきが多かったです。APJE漢字研究会の皆様、本当にありがとうございました。

橋本明子(マドリード)